日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.20

2014年1月25日発行

巻頭言

社会福祉士養成制度改革に向けた「宮田試案」の再考

2005 年の本学会創立大会の記念講演で、故宮田和明初代会長(当時日本福祉大学学長)が社会福祉士養成システムの変革に向けて述べられた大胆な試案がいまだに忘れ難く、近年、益々その検討の必要性を感じるようになっている。例年、7 割以上もの不合格者を出している国家試験の実情を踏まえ、これでは忙しい中、学生を受け入れ指導してくれた実習施設に対してあまりに申し訳ないので、国家試験に合格した学生を実習に行かせるような制度に改めてはどうか-という趣旨の提言であった。2005 年 1 月に行われた第 17 回国家試験から受験者が 4 万人台となり、合格率は 29.8%。合格者 12,241 人に対し、不合格者が 28,803 人に及んだが、以後も合格率は低迷を続け、第 25 回に至っては 18.8%と 2 割を切って 3 万 5 千人近くもの不合格者を出した。初めて複択式の出題が部分的に導入された影響はあるにしても、例年 150 問中 80 点台に設定されてきた合格最低点を 72 点(得点率 48%)にまで一気に引き下げたにもかかわらずこの合格率に留まったのは深刻である。

座学だけで受験し、合格した後に司法修習を受ける司法試験であれば話は別だが、社会福祉士の養成課程では1カ月近い相談援助実習が、多くの福祉施設の利用者、職員らの理解と協力のもとに実施されており、それを含めて国試の受験資格が付与されていることに鑑みれば「、社会福祉士になって福祉の担い手になってくれるもの」との思いで実習生を指導していただいている現場側の期待を裏切るような状況が続いていることは看過できない。

特に新カリキュラム導入以後、実習指導者要件が厳格化され、指導者講習会の受講が必須となったこともあり、職場実習・職種実習・SW 実習の3段階モデルを意識したプログラミングが普及してきており、“介護現場に丸投げ”という実習は激減した。そうした現場側の努力に応えるためにも、「社会福祉士養成」の実をあげなければならない。

そこで、冒頭の「宮田試案」である。在学中に国試を受け、合格者のみ相談援助実習に出てそれを完了した時点で試験センターに登録して法的な有資格者になる。現行制度でも一定の実務経験者には実習が免除されることに鑑み、国試不合格のまま指定施設に就職して相談員・指導員職等の実務を経た者には実習を免除し、次年度以降の国試に再挑戦の末、合格したら資格登録を認める-というような制度設計が考えられる。当然、多くの検討課題が立ちふさがる。①国試実施時期の前倒し。卒業前の春休み程度では対応しきれず、配属調整期間も見込む必要があるため、丸 1 年ほど早めて3年次の 1 月末頃に受験させるくらいの大幅な変更を要するだろう。②すると1年制の一般養成施設が対応不可能となり、2 年制でも難しくなる。4 年次に社会福祉士指定科目を配当している大学にとってもカリキュラム変更を要する。③実習後に行うこととされている最終段階の「相談援助演習」の授業をどうするか。④精神保健福祉士・介護福祉士の国試も考慮する必要がある。

難題の尽きない改革案だが、この発想そのものへの賛同者は意外と少なくない。

理事 横山豊治(新潟医療福祉大学)

目次

  • 巻頭言
  • 特集:2013年度社会福祉教育セミナーからみた本学会の学術的課題
  • 第4回春季研究集会
  • 学会指定研究:教育評価研究会のゴールと進め方
  • 会員の声~私の福祉教育~
  • 学会探訪⑨~日本社会保障法学会
  • お知らせ:学会誌投稿募集・投稿募集・編集後記

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