日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.28

2016年11月15日発行

巻頭言

学会活動と連動する社会福祉教育研究の課題

ここ 20 年くらいでしょうか、社会福祉学、ソーシ ャルワーク関連の学会は増え、研究者の多くは複数の学会に所属するようになりました。その結果、各種学会の年次大会等の日程は重なり、また所属校の校務とも重なり、なかなか学会に参加できないという状況にあるようです。また若手研究者とっては、複数学会の年会費や大会参加費がかなりの負担になっているという声も耳にします。今年度の第 12 回日本社会福祉教育学会大会(2016 年9 月3・4 日)も3 つほどの学会と開催日が重なっていたようです。

このような学会事情の中で、学会大会に多くの参加者が集まり、大会が活性化し、ひいては学会としての存在意義を高めることが学会としてのひとつの目標だと思いますが、はたしてこの学会はそのような歩みとなっているのでしょうか。

私は2 年前に今期の理事に選出され、川島惠美先生(関西学院大学)と共に、理事会では研究担当の役割を担っています。正直なところ、それまでの数年間は、この学会の年次大会には日程と校務の都合で参加していませんでした。ですから、さほど熱心な会員ではなかったのですが、日本社会福祉教育学校連盟の社会福祉専門教育委員会において、永らく「コア・カリキ ュラム構想」に関わっていたため、社会福祉教育、特に福祉専門職養成教育についての関心はありました。

ここでは、研究担当の理事として、この2 年間の取り組みを振り返り、学会の今後の研究体制と課題について検討してみたいと思います。研究担当といっても、我々がこの2 年間で行った仕事は、2015 年度の第11回大会と第6 回春季研究集会、そして2016 年度の第12 回大会と現在、構想中の第 7 回春季研究集会の企画立案が主たる内容でした。そして企画を立てる上でベースになっているのが、2015 年2 月の第5 回春季研究集会の成果です。以下、第 11 回大会の趣旨文より引用します。

ここで提示した4 つの課題を念頭に、この2 年間、大会と研究集会の企画を立ててきました。その一方で、企画担当者のマンパワー不足を訴え、今年度より保正友子先生(立正大学)にも研究担当に加わっていただきました。

4 つの研究課題を設定して2 年が経過して思うことは、あくまで私見ですが、1 の「総合的なカリキュラム研究」が進んでいないということです。それもそのはずで、社会福祉教育を行うところを仮に「大学」に限定したとしても、その実態は多様であり、関連して大学教育のあるべき姿という大きな課題を射程に入れなくてはならないことになります。また認証評価の問題や国家資格養成教育の評価と位置づけも絡んできます。

さらに今後は、厚生労働省が構想する「我が事・丸ごと地域共生社会」の担い手をいかに養成するかという(ディプロマ・ポロシーあるいはカリキュラム・ポリシー)問題も検討されなければならないと思われます。

そこで、あくまで私見ですが、学会が取り組むべき当面の課題を整理すると同時に研究計画を作成し、それを軸に活動していくことを提案したいと思います。その時には、社会福祉教育研究の多様性と分野論設定についても検討するべきだと思います。また他の学問分野・学会(例えば日本医学教育学会、日本看護学教育学等)の活動・業績等についても渉猟するべきでしょう。

ちなみに手元にある資料によると、第 48 回日本医学教育学会(2016 年7 月29 日・30 日)のシンポジウムは15 本の企画があり、「グローバルスタンダードに適う入学者選抜を目指して」「わが国でプロフェシ ョナリズム教育は進んでいるか」「医学部における行動科学・社会科学の特色ある教育の試み」「共用試験OSCE10 年を考える~昨日・今日・明日~」「各専門職から捉えた医療保健福祉の多職種連携コンピテンシー」など、興味深いテーマが並んでいます。

勿論、医学教育と社会福祉教育を安易に比較するものではありませんが、社会福祉教育の多様性と研究領域を設定する際には参考になると思います。今後、学会の活動が軌道に乗り、多くの会員が集い活性化されることを目標に、残された理事任期(後1 年)を務めたいと思います。

理事 白川 充(仙台白百合女子大学)

目次

  • 巻頭言
  • 第12回大会報告
  • 会議報告 SWSD2016
  • 報告「我が事・丸ごと地域共生」をめぐる緊急討論集会
  • 会員の声~私の福祉教育~
  • 総会報告
  • お知らせ
  • 編集後記

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