日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.34

2020年6月14日発行

巻頭言

新型コロナ感染症と専門職養成教育

2020 年は東京オリンピックに向け ワクワクする年明けでした。大学では 2023 年度からの社会福祉士・精神保健福祉士養成課程の新カリキュラム導入に向けた準備が忙しくなるであろうことを予測しながら それでもいつもと変わらない日々を疑っていませんでした。

その状況は 2 月ごろから大きく変わり 新型コロナ感染症の拡大に伴って 私たちの生活も教育機関の動きも それまでとは大きく変わってしまいました。 2 月は多くの教育機関では通常の授業期間を終 えているものの 専門職養成課程では各種の実習に取り組んでいる時期でもあります。 2 月 28 日文科・厚労通知(「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校 養成所及び養成施設等の対応について」)では 社会福祉士・精神保健福祉士の実習中止や休講等に関する通知がなされ これまでにない大きな変化が起きうることを感じました 。

新型コロナの感染メカニズムが解明されない中で 人と人の接触を断つことが対策の最優先とされるようになりました。行動自粛要請にこたえて 「 STAY HOME 」を合言葉に各校のキャンパス から学生たちの姿が消えました。新入生を迎えるはずの 4 月には 事態はさらに深刻化し 通常の授業を開始することができず インターネットを利用した遠隔授業の対応が急がれました。

ソーシャルワーク専門職である社会福祉士や精神保健福祉士は 人と人 人と環境をつなぐ対人援助職であり その学習においても実習においても 人と出会い向き合うことなしには成り立ちません。演習授業でのグループワークやロールプレイで 学生たちはそれまでに学んできた知識を自分の言葉や態度で実践化することを学びます。また 専門職としての倫理規範や価値に基づく思考を鍛えていきます。そして それらを実習の場で クライエントとのリアルな出会いを通して臨場感をもって学び返していきます。

人びとがさまざまな関係のなかで人として生き豊かな暮らしを送ることを支援する専門職の養成において欠かすことのできない演習・実習教育が 通常のかたちでは実施できないというかつてない危機を迎えています。

日本ソーシャルワーク教育学校連盟(ソ教連)が4月に実施した緊急調査では演習授業の録画配信・ライブ配信授業を「実施・実施検討中」の会員校が約 7 割 実習の代替措置を検討している会員校が約 4 割でした。対面の演習授業や現場での実習の意義を重視しつつも コロナ対策に奮闘中の福祉施設や医療機関に実習受け入れの余裕がないこと 学生の健康や安全実習先の利用者等の感染防止等への配慮の面から 現場実習に代わる措置という苦渋の決断を迫られています。

「実習をしないで対人援助が学べるのか」「実習に遜色のない代替措置がありうるのか」 懐疑的な意見もある中で 実習の代替措置を決めた養成校・養成施設では 新たな授業の設計に取り組んでいます。その成果は 本学会でも検証される必要があるでしょうし 新カリキュラムにおける実習教育に新たな視点を与えてくれることになるかもしれません。誰もが経験したことのない事態に 誰もが経験したことのない新たな試みをしようとしています。

新型コロナ感染症は身近な人たちとの直接的な接触やつながりを断ちました。

一方でインターネットを通じて遠くのあるいは直接には知らない人たちと関係を結んだり新たなコミュニテ ィを生み出すことにもなりました。医療従事者に感謝を伝える運動をはじめ社会がさまざまな人の仕事によって支えられていることを再認識することにもなりました。

医療従事者ほど注目を集めませんでしたが福祉領域で働く専門職も途切れることのない専門サービス・支援を提供し続けています。その営みをしっかりと引き継ぐことのできる専門職の育ちを この厳しい状況下でも追求することが 専門職養成にかかわる教員の使命であることを実感しています。

目次

  • 巻頭言
  • 第 16 回大会案内「社会福祉教育の普遍性と特殊性 ~ポスト・コロナの福祉教育を考える」
  • 学会誌への投稿募集
  • 令和 2 年度役員選挙投票期間(7 月 3 日まで)

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