日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.35

2021年3月31日発行

巻頭言

教育の新たな可能性‐危機とイノベーション‐

現在、人類は新型コロナウイルス禍という未曽有の危機に直面しております。人類の歴史において、世界中が一斉に打撃を受けるような危機は、かつて無かったことです。あえて先例を見出すならば、氷河期に匹敵するものと言っても過言ではありません。栗本慎一郎は『パンツをはいたサル』(光文社、1981 年)の中で、「人間は、 20 %の人間性と 80 %の動物性から成る」と指摘しました。そこには、パンツ(衣類 )=人間という構図があります。ダイヤモンド・オンラインメールマガジンに掲載されたマックス・プランク進化人類学研究所のキットラー博士らに関する記事によると、人類が衣類を着はじめたのは約 7 万年前の最終氷期のウルム氷期が始まったと推論されております。また、アンザック・ニュートンが万有引力を発見したのは、大学在学中の 1665~1666 年のペスト蔓延による大学閉鎖の最中でした。後に、「創造的休暇」と言われる逸話です。このように、人類の歴史は危機に直面しても、必ずそこから何かを学び取ってきたのです。

さて、この度はど うでしょうか。教育界では、オンライン授業をはじめとする ICT 導入が一気に加速しました。もともとは、対面授業の代替として導入されたオンライン授業でしたが、アフター・コロナにおいても一定の授業形態として意味を持つまでになってきております。この間、教育者としての教材開発や授業改善のための工夫は並々ならぬものであったと拝察いたします。併せて、電子ブック等の新たな教材も普及してきており、社会福祉学分野においても徐々に浸透しつつあります。わが国の文部科学行政においても、幸いにもコロナの直前からICT 教 育推進に舵を切った ことが、多くの混乱の中で一定の効果を生み出したのも事実です。初等・中等教育では、新しい時代に必要となる資質・能力の育成の観点から、「どのように学ぶのか(主体的な学び、対話的な学び、深い学び)」や「何ができるようになるのか」を基本とする学習指導要領の改訂が行われ、 2018 年度から順次導入され始めております。さらに、今年度から導入された大学入学共通テストで求められる力は、思考力・判断力・表現力とされております。その評価は歴史に委ねるとして、これらの変革の先に位置づく高等教育はどうでしょうか。改 めて、“場としての 学校の意義”や“授業のあり方”が問われるところです。

他方、コロナ禍は学生の休学や退学をはじめとする経済的課題やメンタルヘルス等々の課題も生み出しました。これらの課題への対応は、教育機関あるいは教育者としての真価が試されるところです。わが国でも広く紹介された武漢在住の作家方方(ファンファン)さんの『武漢日記』 2020 年 2 月 28 日の一節は、「一つの国が文明国家であるかどうか、 中略 基準はただ一つしかない、それは弱者に接する態度である」と喝破しておられます。この「弱者」を「ともに生きる者」と読替えたらどうでし ょうか。社会福祉や教育に携わる者として、重く受け止める べき言葉です。

目次

  • 巻頭言
  • 第 16 回大会報告
  • 第 17 回大会「社会福祉分野における ICT 活用教育の課題と展望-ウィズ/アフターコロナ時代の社会福祉教育を考える-」開催案内
  • 総会及び理事会報告
  • 第 6 期理事会体制
  • 事務局からのお知らせ~2021 年度年会費納入依頼の発送について

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