日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.38

名誉会員就任のあいさつ

この度、本学会の名誉会員に関する規程に基づき、名誉会員として笛木俊一会員(日本福祉大学名誉教授)を推薦、選出いたしました。名誉会員推挙規程の名誉会員推挙基準1(原則70歳以上)、2(原則会員)、3a(理事・幹事通算2期以上)に該当することを確認し、理事会によって推薦が行われ、2021年度総会(6月20日開催)において承認され、笛木会員に受諾していただいております。

笛木俊一会員は、学会設立当初よりの会員であり、とりわけ第4期理事会(2014年度総会~2017年度総会)および第5期理事会(2017年度総会~2020年度総会)において通算6年にわたり監事として学会の発展に寄与してこられました。

本学会への長年のご尽力に対して心より深く感謝申し上げますとともに、本学会を含め、今後の益々のご活躍を祈念いたしております。

日本福祉大学名誉教授 笛木 俊一(株式会社 フエギ 代表取締役)

今回の「名誉会員」就任の申し入れについて、学会創立以来の会員として喜んでお受け致します。名誉会員就任の挨拶として、これまで私が社会福祉専門職の教育活動や研修活動の中で考えてきたことの一端を述べておくことにします。

これまで私に「名誉」の称号が授与されたものが2つあります。1つは、1976年に日本福祉大学社会福祉学部に3 0歳で赴任し、2014年に退職するまでの3 8年間の教育活動の中で、2011年に授与された日本福祉大学名誉教授の称号であり、あと1つは、わが国で最初に青年期障害者の共同作業所づくりに取り組んできた社会福祉法人ゆたか福祉会で、2006年から理事、研修委員、苦情解決委員として行ってきた研修活動に対して、2021年に授与された同会の名誉評議員の称号がありますが、 ここでは、同会の苦情解決委員会の活動の中で考えたことを紹介しておくことにします。

私が同委員会に第三者委員として関わっていた時、2005年に制定された障害者自立支援法のもとでの障害者施設の今後に不安を感じ始めた高齢の保護者(母親)から「次第に体が弱ってきている子ども(入所者)と一緒に死にたい」という深刻な悩みを打ち明けられました。その時、私は、何故、その母親が子どもと一緒に死にたいと思ったのかということの中身について、ゲーム理論の逆算法の考え方を手掛かりとして、①もし、この子が生まれてこなかったら、こうしたことで悩むことは無かっただろう。②母親である私が、この子を産まなかった方が良かったかも知れない。③この子を産んだ私自身が生まれてこなかった方が、良かったかも知れない (過去への遡及)と考え、その後の理事会の中で、そうした考え方を紹介したところ、保護者代表の女性の理事から「そこまで言いますか」と悲痛な声で咎められました。恐らく、その方も一度はそうした母子心中のことで悩んだ経験があったのだろうと思います。

その時、私は、苦情解決委員として、ようやく地に足が着いたと感じました。その上で、さらにゲーム理論の逆算法の考え方を手掛かりとして、①母親である貴女とお子さんのこれまでの生活が、どのようなものであったとしても(過去の生活)、 ②今の生活が、どのようなものであるとしても(現在の生活)、③貴女とお子さんのそれぞれの願いを大切にして(精神的な自律と尊厳性)、④これからの生活を(未来の生活)、施設職員や関係者と共に(共感と福祉的関係の構築)、歩み出してみようではありませんか(福祉の実践)と語り掛けてみたいと考えました。つまり、福祉の実践とは、過去へ遡る考え方を否定して、福祉の利用者(クライエント)が、新たに始め直すことができる「自由」を実現することである(因果律の切断)という考え方です。そして、私がそうした考え方の基礎に置いたのが、時間の流れを未来から現在へ繋げるという実存主義の考え方でした。

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