日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.39

巻頭言

対面とオンラインの研修効果は同等か?

保正友子(日本福祉大学)

 2022年度より、本学会では課題研究(研究プロジェクト)として、「ICTを活用した社会福祉教育のあり方に関する総合的研究」を開始しました。そこでは、実習グループと演習グループに分かれて、ICTを活用した社会福祉教育のあり方について研究を進めています。2年後には、何らかの成果が公表できる予定です。

 振り返ると、Zoomなどのオンラインツールが学校教育の現場に本格的に取り入れられてから、すでに三回目の春を迎えました。教員にとって、最初は試行錯誤の連続だったツールの使用にも慣れてきて、今は対面授業を基本としつつ、必要に応じてオンラインを取り入れるハイブリッド方式に落ち着きつつあるのではないでしょうか。そのため、そろそろ本格的に、オンラインツールを活用した社会福祉教育や研修の効果を測定する時期に差し掛かっているのではないかと考えます。

 筆者は先だって、オンライン研修の効果を明らかにするために、研修運営側のスタッフへのグループインタビューを行いました。そのなかで印象的な語りがあったため紹介します。あるインタビュー協力者は、オンライン研修の実施を「コンテンツを作って消費するサービス提供のようだ」と表現しました。対面研修時には、横のつながりを持ちながらその組織への所属意識が醸成される場だったのが、オンラインでは一定の時間にサービス提供を行いそれが消費される機会にかわったのではないか、というのです。だからこそ、あえて参加者がその組織に所属していることを意識できる運営、例えば、必ずグループ討論の機会を設けたり、皆で一緒に考える場をもつことが必要ではないかということでした。

 すなわち、全ての研修ではないまでも、オンライン研修は対面研修で得られるものを部分的に充足するにすぎなかったり、対面とは質の異なる体験であるため、オンラインでは得られない部分を補う装置が必要だということです。それはどのようなものなのか、私達の経験値から導き出せるものなのか、教育工学等の学問知見の助けを借りる必要があるのか。私のなかでは、まだ十分に答えが見つかっていません。

 ただ一つ言えることは、各所で展開されてきているオンラインツールを使った教育・研修の成果を集めて、そのなかから最適解を導き出すことができるのではないかということです。それこそが学会固有の機能であり、全国で教育活動を展開している会員が所属する本学会の強みともいえるでしょう。2022年度は、そのような作業を開始する年としても位置付けたいものだと思いました。

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