巻頭言
社会福祉教育と平和
阪口 春彦(龍谷大学短期大学部)
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナやロシアだけでなく、世界中の人々の生活に大きな影響を与えてきました。
ロシアによるウクライナ侵攻によって生じる生活上の課題に対して、人々の生活の支援を行う社会福祉が果たすべき役割は多くあると考えます。ウクライナからの避難民に対する支援をはじめとして、物価上昇に伴う生活困窮への支援など、さまざまな社会福祉の支援が必要となっています。
それらの支援のあり方だけではなく、なぜロシアはウクライナに侵攻したのか、なぜ国際社会はロシアによるウクライナ侵攻を防げなかったのか、侵攻を止めるにはどうすればいいのか、などについても社会福祉学は向き合い、教育を行う必要があると考えます。また、ロシアによるウクライナ侵攻以外の過去あるいは現在における紛争について、そして紛争を防ぐにはどうすればいいか、いかに平和を構築していくのかについても社会福祉学は向き合い、教育を行う必要があると考えます。
なぜなら、紛争・平和と社会福祉は、次のように非常に密接な関係にあると考えるからです。
紛争は福祉を阻害します。平和は福祉を促進します。福祉は平和を促進します。
しかしながら、これまでの社会福祉教育の中では、紛争や平和について十分には取り上げられてこなかったのではないでしょうか。
一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟の「第51回全国社会福祉教育セミナー2022」の初日には、国際シンポジウム「ソーシャルワークと戦争~避難民支援をめぐる実践・教育のグローカル連携~」が開催されました。このシンポジウムは社会福祉教育において画期的なことだったと思います。
ロシアによるウクライナ侵攻が長引き、日本国内でもGDP比2%に向けた防衛予算の増額や「敵基地攻撃能力」、「反撃能力」の保有に向けた動きが進む現状において、社会福祉教育の中で、紛争や平和についてしっかりと取り上げることが極めて重要な課題となっていると考えます。
外交を通じた対話や交流、人間の安全保障などを通じて国際的な緊張関係を緩和させ、平和な国際社会を築くために、さまざまな学問領域とともに社会福祉教育が大きな役割を果たしていけるよう、社会福祉教育にかかわる者が紛争や平和に強い関心を持つことが求められているのではないでしょうか。