日本社会福祉教育学会 第14回春季研究集会
2024年3月3日(日)13時~16時30分、関西学院大学梅田キャンパスにて日本社会福祉教育学会第14回春季研究集会「社会福祉士養成カリキュラムにおける240時間実習実施の課題解決に向けて」が開催された。
本研究集会は、第19回大会(2023年8月26・27日開催)時のワークショップ(「新カリキュラムに対応した実習及び演習プログラム開発ワークショップ」(コーディネーター:川島惠美会員(関西学院大学)、ファシリテーター:高杉公人会員(新見公立大学)、サンプルプログラム提供者:平尾昌也先生(関西学院大学))の続編として開催された。
研究集会冒頭、本学会会長の志水幸会員より、「挨拶の中で話をすることがふさわしいか否かという話ではあるが」と前置きの上、本学会設立の呼びかけ人のお一人であり、初代事務局長、副会長を務められた米本秀仁先生(北星学園大学名誉教授)が昨年12月3日に他界されたという話があった。その後、心より哀悼の意を表するとともに、ご冥福を心よりお祈り申し上げるべく、参加された方々とともに1分間の黙祷が行われた。
会長挨拶後は、初めに2箇所実習の実施形態ごと(60時間+180時間とそれ以外)のグループに分かれ、各々の大学等で実習を行うに際し、どのような課題があるのか、どのようなことに工夫をしているのかなどについて意見を出し合い、各グループ、発表を行った。
次に、つなぎの実習指導(事前・事後指導を含む教育目標や教育内容など)をどのように行っているのかなどについて各グループにて各々の考えを出し合う機会を設けた。
当日の詳しいスケジュールは、以下のとおりである。
なお、第19回大会時のワークショップの内容は、2箇所実習に関する体験を持ち寄り、実習実施パターンによる4つのグループに分かれ、事前・事後学習も含めた課題について出し合い話し合う機会であった。
ワークショップの流れ
13:00~13:10 | 挨拶・進め方等 |
13:10~13:30 | アイスブレイク・グルーピング |
13:30~14:20 | グループワーク① ソーシャルワーク実習・実習指導の課題と養成校の対応・工夫 |
14:20~14:30 | 発表:1グループ×5分 |
14:30~15:50 | グループワーク② つなぎの実習指導 |
15:50~16:10 | 発表:1グループ×10分 |
16:10~16:30 | 質疑応答・クロージング |
グループワークでは、実習先と養成校とが連携する中での課題や合理的な配慮を要する学生への対応のあり方などといった課題があげられた。このような課題に対し、工夫している点については、各々、頭を悩ませながらも工夫していこうとする内容の回答があげられた。
その他、2箇所実習を行うに際し、実習の事前・事後の学習をどのようにスムーズに行っていくのかといった、つなぎの実習指導に関しては、学生のモチベーションが上がるようなさまざまな工夫が挙げられた。
質疑応答時では、学生1人に対し、各実習先の実習指導者間だけではなく、各養成校においてもどのような連携を取っていく必要があるのかなどといった240時間実習ならではの課題があげられた。
今回、各養成校等、学生がより良い実習を行うことができるように240時間実習を実施する上で抱えている課題に対し、参加された方々が知恵を出し合う充実した時間となったのではないかと感じた。
参加された皆さま、年度末のお忙しい中、ご参加いただき誠にありがとうございました。
次回、皆さまにお会いすることができるのは第20回大会(2024年9月7・8日(予定))を予定しています。 多くのご参加、お待ちしております!
参加者の声 第14回春季研究集会に参加して
竹森美穂(関西学院大学)
昨年、本学会に入会し、春季研究集会には初めての参加でした。「社会福祉士養成新カリキュラムにおける240時間実習実施の課題解決に向けて」と題し、昨年の第19回大会開催校企画の続編として、①新カリキュラム下における実習及び実習指導の課題やその対応、②2か所実習のつなぎとしての実習指導のシラバス作成をテーマに、模造紙を使いながら、参加者の経験を持ち寄りワークショップに取り組みました。
私が参加したグループは、4年制福祉系大学(通学・通信)、2年制福祉系大学、1年制専門学校と様々な教育課程が混在するメンバー構成でした。所属先によって、実習と実習指導の配置時期が異なるため、直面する課題も多様でワークショップとしての成果物を作り上げることには困難がありました。しかし、参加者それぞれの置かれている実情や、直面している課題、日々の教育活動の中で感じていることを共有する中で、2か所実習のつなぎについて、実習先との効果的な連携をどのように作り上げていくのか等、状況は違えども共通する課題も見出されました。また、意見交換を通じて、実習と実習指導をどのように構成していくかという課題の一方で、教育機関だけではなく専門職団体や事業者団体等と一緒にソーシャルワーカー養成(それだけではなく、事業所の人材確保も含めて)に関わる課題を政策へとフィードバックしていく必要性について、改めて考える機会ともなりました。
私自身は、ソーシャルワーカーの継続学習に関心を寄せていることから、学生が養成課程時代に専門職として学び続ける土壌を耕すことが重要と考えています。現在2か所実習への対応に右往左往している状況ではありますが、今年度初めて新カリキュラムでの実習を経験した学生を見ると、マイナスばかりではないことも承知しています。一方、現場では人口減少時代における事業継続、人材確保などの問題が山積しています。学生の職業選択意識も刻々と変化をしています。そのような現状を踏まえて、新たな変更にどのように向き合い、効果的なものにしていくか、そして学生、現場、教員にとって負担感が大きくなりすぎずに取り組めるよう、修正すべきことは何か、実習・実習指導だけではなく、そして教育だけの問題ではなく、広い視野で捉えてゆくことがより一層求められるのではないかと感じました。
今回の研究集会参加を通じて、養成校の垣根を越えて共に考える機会を得ることができたのは、私にとってとても貴重な経験でした。実習教育に関して今後も本学会で諸先生方と継続的に考えていくことができれば幸いです。