日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.45

巻頭言

足下を掘れ、そこに泉あり

日本社会福祉教育学会 理事 西川 ハンナ(創価大学)

理事 西川ハンナ 会員
理事 西川ハンナ 会員

 グローバル化、ICT化は凄まじいスピードで進み、研究や教育においてもそれらの共有が推奨される。全方位で、「もっと合理的に、効率的に、世界を見ろ。それが価値あることだ」といわれているようだ。

 表題はニーチェの言葉が由来である。福祉教育においても身近な地域で行われている福祉活動を学ぶより先に、抽象度の高い汎用性のある知識や技術を伝えても学生の理解が追いついていないのではと思うことがある。教育機関の所在地においてその事例をもって社会福祉の理解や関心へとつなげる方法もあるはずだ。そのような社会福祉教育の、実践例の収集も必要ではないだろうか。

 本学会の第20回年次大会(2024年9月7・8日)の開催校企画「SDGsに貢献する地域課題解決型の教育活動の取り組みと社会福祉教育~循環する地域参加と学び~」は創価大学文学部・経営学部・理工学部で地域活動を行う教員によるシンポジウムである。面白いのは、各シンポジストの研究テーマはその地域活動とは異なる。なぜそうなったのか。どのような教育効果を感じているのか。そこに福祉教育のヒントがあると考える。ぜひ多くの会員の参加を期待する。地域らしさといえば、学会2日目の9月8日はかつて桑都と呼ばれた八王子で、「第3回桑の日 ウェルフェス」を開催する(主催;創価大学桑の日実行委員会×創輝株式会社)。ウェルフェスとは「個人や地域社会の健康で良好な状態を意味するWell-beingとフェスティバルFestival をかけ」名付けた。福祉を基盤に地域社会との接点を広げていきたい。

ニュースレターイメージ

 再びニーチェの言葉に戻る。『喜ばしき知恵』(村井則夫翻訳)では、以下のように翻訳されている。

 尻込みせずに 君のいる場所を深く掘れ!/地下には泉があるからだ!/愚かな輩やからには言わせておこう/「地下にあるのは―地獄に決まっている!」と

 萌芽的な地域実践や活動は「それは研究なのか」と失笑されることがある。しかし、地域活動の中には地域固有の風土・歴史から生まれたその地域による意思決定の方法や近隣と禍根を残さない工夫なども含まれている(西川2023)。これらはソーシャルワークのグローバル定義の「地域・民族固有の知」である。福祉教育において地域活動にも注目していきたい。たとえ笑われても「言わせておけ、さあ尻込みせずに」というニーチェの言葉を胸に。

参考文献

西川ハンナ(2023)「書評 小森孝一『佐原の山車祭りとまちおこしの35年』~佐原の誇り『江戸優り』すべては佐原の賑わいのために~」週刊読書人2023年5月26日
フリードリヒ・ニーチェ 村井則夫訳(2012)『喜ばしき知恵』河出文庫 

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