日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.49

日本社会福祉教育学会 第21回大会

実践力を備えた専門職を養成する
―個別性・多様性に着目した教育方法を模索する―

日本社会福祉教育学会 第21回大会

2029月6日6日(土)・7日(日)
川崎医療福祉大学(岡山県倉敷市松島288)

 2025年9月6・7日、川崎医療福祉大学にて日本社会福祉教育学会第21回大会「実践力を備えた専門職を養成するー個別性・多様性に着目した教育方法を模索するー」が開催されました。

諏訪利明氏(川崎医療福祉大学)

 大会1日目は、基調講演「伝えたいことを・伝わるように・伝える―TEACCH※の考え方を援用した指導―」が開催されました。仲井達哉氏(川崎医療福祉大学)を座長に、諏訪利明氏(川崎医療福祉大学)「TEACCHの考え方の基本」、小田桐早苗氏(川崎医療福祉大学)「TEACCHの考え方を実践で活用する」という2つの講演でした。※TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communications Handicapped Children):発達障がいのある人々を支援するプログラム.

小田桐早苗氏(川崎医療福祉大学)

 続いて、開催校企画シンポジウム「現場にスーバービジョンはあるのか?―“四者良し”を目指すスーパービジョン―」が開催されました。竹中麻由美会員(川崎医療福祉大学)がコーディネーター、話題提供「実習スーパービジョンを巡る動向」及びコメンテーターを楢木博之会員(静岡福祉大学)がつとめ、養成校教員の立場から口村淳氏(岡山県立大学)、実習指導者の立場から高倉紀子氏(岡山県社会福祉士会)、そして実習生としての立場からノートルダム清心女子大学4年次生2名が登壇されました。

 大会2日目は、学会企画シンポジウム「資格者養成教育の範囲を超える-社会・地域における実践型教育から学ぶ-」が開催されました。小山隆会員(同志社大学)がコーディネーターをつとめ、田村久美氏(川崎医療福祉大学)、川島恵美会員(関西学院大学)、小関久恵会員(東北公益文科大学)が登壇されました。

 基調講演、開催校企画シンポジウムおよび学会企画シンポジウムそれぞれで,登壇者の取り組み等を通じて多くの学びを得る場となりました。

谷川智宏氏(川崎医療福祉大学)

 2日目に開催された開催校企画ランチョンセミナー「指導する立場で知っておきたいイマドキ学生の生成AIの使い方」では、谷川智宏氏(川崎医療福祉大学)が、具体例を示して下さいました。その他、教員に加え学生からの報告も行われた教育実践報告および自由研究報告でも、それぞれの会場で活発な議論が交わされました。

 情報交換会は、隣接する川崎医科大学附属病院内のレストラン「楷の木」で開催されました。今回の学会を共催として運営して下さった岡山県社会福祉士会実習指導者養成委員会の皆さんも参加され、教育現場と臨床現場を巡るさまざまな社会福祉教育談義が交わされました。

 本大会期間中、多くの方々が足を運んでくださいました。ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました!

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【参加者の声】

脇野 幸太郎(周南公立大学)

 このたび本学会に入会させて頂きました、周南公立大学の脇野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

開催校企画シンポジウムの様子
開催校企画シンポジウムの様子

 私の専門は法律学、特に社会保障法です。その立場で長らく福祉系の学科に在籍し、社会福祉教育に携わってきました。社会福祉そのものやソーシャルワークについて専門に学んできたわけではないため、社会福祉教育のあり方やその中での自身の立ち位置については、あれこれ思い悩みもし、混迷に近い試行錯誤を繰り返してきました。

 それに加えて、昨年度、現任校に異動するにあたり、初めてソーシャルワーク演習科目を担当することになり、私の社会福祉教育実践は、さらに混迷の度合いを深めることとなりました。10数年前に演習担当教員講習を受講したきり、前任校では科目自体の担当経験がなく、「新米教員」としての昨年度は、他の教員のアドバイスを受けつつも、まさに暗中模索の状態でした。そのため、半ば付け焼き刃的に、ソーシャルワーク教育や演習科目の実践に関する文献等を渉猟し、自分なりにも考えてみた結果、こうした課題に研究の対象として取り組む必要性を痛感し、この領域の最新の研究動向に触れさせていただきたいとの思いから、本学会に入会させていただきました。

 参加した第21回大会では、こうした研究の一端として「映像、ICTを活用したソーシャルワーク演習教材の開発・運用」と題した自由研究報告をさせて頂きました。これは、ソーシャルワークを専門とする研究者の方々と共同で、科研費を頂いて取り組んだ研究成果のうち、私自身に関わる部分について報告したものです。当日は、研究内容やそれに基づく実践に関し、自身では想定しえなかった視点などについて、大変有益なご指摘やご質問を頂きました。この点、改めて深く感謝申し上げます。

学会企画シンポジウムの様子

 学会には2日目のみの参加でしたが、学会企画シンポジウムでは、文字どおり「資格者養成教育の範囲を超える」多様かつ貴重な実践事例に触れることができ、高等教育機関としての大学における、本来の意味での「実践的な」社会福祉教育の重要性とそのあり方について、深く考える大変貴重な機会となりました。現在の資格者養成教育自体は否定されるべきものではないと思いますが、それにこうした取り組みが有機的に加わることで、資格者養成教育も、本来の目的や意義を取り戻すことができるのではないかという感想を持ちました。

 実践的という意味では、当日の開催校企画ランチョンセミナーにも、企画の面からも、内容の面からも、大変感銘を受けました。ランチョンセミナーという気軽な場でありながら、その内容は実践的かつ示唆に富むもので、今後の教育活動や業務に大いに活用させていただきたいと思っています。

 以上のとおり、社会福祉教育の研究という面では駆け出しではありますが、本学会の発展に少しでも寄与できるよう、精進してまいります。今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

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【参加者の声】

岡部真智子(名古屋市立大学)

教育実践報告の様子
教育実践報告の様子

 9月6日、7日に川崎医療福祉大学で開催された第21回大会に参加しました。近年は大会への参加がかないませんでしたが、今春から大学を移り、少し振り返る時間ができたこと、また昨年までゼミ生と取り組んでいた活動に対し、他の方からご意見を伺えればと思い、この度「教育実践報告」で発表させていただきました。

 「教育実践報告」は、自由研究報告とは異なり、「教育実践」を発表できる機会ですから、実践活動を行う会員にとって有益な機会だと思います。私以外の2団体では、先生のご指導の下、学生が中心となって発表していました。全体で30分という時間の中で、まず3団体の発表があり、その後発表者に対する質疑応答の時間が設けられました。私はゼミ生と一緒に取り組んだVRゴーグルを使った視野欠損者の見え方を理解するために作成した教材について発表しましたが、質疑応答の時間に社会福祉協議会の方や他大学の先生から貴重な意見をいただくことができました。もし次年度以降もこの企画があるならば、事前に発表と質疑応答の時間が全体で共有されていると、より有効に時間を使えるのではないかと感じました。しかしこれはさほど大きな問題ではなく、このような企画が大会の中にあり、会員がそれを活用し、意見交換を活発に行うことが重要だと考えます。

自由研究発表の様子
自由研究発表の様子

 2日間の学会全体を通して振り返ると、企画ごとに特色があり、社会福祉士の実習にかかる内容、実習以外の学生の学びを深める取組みを学ぶ内容等、大変幅広く、工夫されていました。開催校である川崎医療福祉大学の先生方がこれまで取り組まれた教育や実践が企画に大きく反映されていた点も興味深く感じ、開催校の特色を伝える機会になると感じました。最後に学会長である志水先生のご挨拶にもあったように全体を通じて、共通点も見いだされ、学び多い時間を得ることができました。

情報交換会で楽しんでいる皆さま
情報交換会で楽しんでいる皆さま

 私自身、大会の参加を通じて、学生や当事者から語られる言葉をどのように受け止めて理解するか、こちらが伝えたい内容をどのような言葉を用いてどう発していくのか、相手との関係をどのように結ぶのかなど、改めて考える機会になりました。

 残暑厳しい中での大会でしたが、開催校である川崎医療福祉大学の竹中麻由美先生をはじめ多くの先生方が心を配って大会を運営してくださいました。また登壇された先生方、学生さんが入念な準備の下に発表してくださったおかげで、学び多い有意義な2日間を過ごすことができました。皆様に記してお礼申し上げます。

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日本社会福祉教育学会事務局

東北公益文科大学 小関研究室
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