日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.10

2011年7月5日発行

巻頭言

豪華客船型といかだ連帯型

東日本大震災直後の8月17日朝日新聞オピニオン広場に、軍事アナリストの小川和久さんの考え方が紹介されている。「危機管理の要諦は拙速を旨とすべし。万全でなくてもいい。政府は走りながら対策を整え、走りながら対策を講じていくことだ。そのためには司令塔チームを設けることが不可欠。チームは大規模にしてはいけない10人程度がいい」と提案している。

しかし、首相のとった行動は、いろんな新しい「会議」を立ち上げさらに内閣参与を次々に任命。まさに、「豪華客船の建造」といえる。本来「司令塔チーム」の役割を期待されていた首相の諮問機関、東日本大震災復興構想会議(15人の委員)が、4月11日に閣議決定された。しかもその下部組織として検討部会が19人の委員で構成された。その後、震災から102日目(6月20日)に復興基本法が成立(阪神・淡路の大震災の際は1ヶ月)。復旧・復興の司令塔になる「復興庁」がようやくスタートした。

そこで「復興庁」に、福祉系NPO法人が協働・共創する愛知県知多半島実践例を提供する(参考図書:岡本一美(2011) 「市民育成と情報交流ネットワークで地域力を育む」牧里毎治監修『福祉系NP0のすすめ』ミネルヴァ書房)。

知多半島は5市5町からなる人口約62万人。この半島内にある福祉系NPOは助け合い活動を展開しながら、人材育成・情報交換のゆるやかなネットワークを組み、「NPO法人地域福祉サポートちた」という組織を中心として協働で33の福祉系NPOが事業を実施している。地域福祉サポートちたの団体会員の事業収入は2007年度12億2,800万円に達している。この福祉系NPO法人の理念は「豪華客船型からいかだ連帯型」である。すなわち、大規模な福祉施設を豪華客船に例えると、いかだ連帯型は、小規模事業所がしっかりとした網(地域福祉サポートちた)でつながり、小回りを確保したうえで、環境の変化にも協働で立ち向かうまちづくり型福祉である。いかだを構成する一本いっぽんが市民である(戸枝陽基・岡本一美)。

「地域福祉サポートちた」が知多半島の福祉系NPOの網であり、つなぎ役の司令塔でもある。今回の東日本大震災でも、知多半島の「いかだ(筏)」連帯方式が、被災地でいち早くピンポイントの支援活動を開始したことはいうまでもない。

日本福祉大学
柿本誠

目次

  • 巻頭言 豪華客船型といかだ連帯型
    日本福祉大学 柿本誠
  • 2011年度第1回理事会報告
  • 会貝の声~私の福祉教育

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