巻頭言
虫の目・鳥の目・魚の目から事例を捉える力を養う
日本社会福祉教育学会 理事 保正 友子(日本福祉大学)

社会福祉士国家試験を終えた学生から、「事例問題が難しかった」という声を聞くことが増えている。年々、事例問題の出題割合が高まり、現場実践者にとっては取り組みやすい一方で、学生にとっては難易度が高いと感じられることも少なくないようである。このような状況を踏まえ。事例を適切に読み解く力をどのように養うかについて、私見を述べたい。
事例理解の要は、何よりもアセスメント力にある。もちろん、プランニングや支援実施とも密接に関連しているが、根幹となるアセスメントが十分に行われているかどうかが、その後の支援の質を大きく左右する。アセスメントにおいて求められる視点として、虫の目(事象の細部を捉え、相互作用で生じる影響力をみる視点)、鳥の目(人と環境の関連性やネットワークを俯瞰する視点)、魚の目(時間の流れの中での変化を捉える視点)が挙げられる。
社会福祉専門教育に置き換えて考えると、これら三つの「目」を養うためには、次の三つの力を強化する必要がある。
第一に、授業で整理して学んだ各論の知識を、分野横断的に結びつけ、相互作用として理解する力。第二に、把握できている情報だけでなく、まだ明らかになっていない情報を洞察し、それらを統合して全体像を俯瞰する力。第三に、段落ごとの事例内容を的確に読み取り、前後の文脈を踏まえて変化を捉える文章読解力である。
では、この三つの力を育むためには、どのような教育方法が求められるのだろうか。ソーシャルワーク演習と実習の場面に即して考えてみたい。
ソーシャルワーク演習では、より踏み込んだ事例検討を繰り返し行うことが重要である。具体的には、段落ごとの事例要約の作成、支援前後のイメージを付加したエコマップの作成、アプローチ後の変化を予測するディスカッション、既知の情報と未知の情報を峻別して整理する練習などが挙げられる。
ソーシャルワーク実習では、知識や技術が複雑に溶け込んでいる実践現場において、それらがどのように活用されているのかを分析し、実習指導者からフィードバックを受ける機会を得ることが大切である。
本学会においても、多様な教育実践事例を持ち寄り、学生の「事例をみる目」を育てる取り組みがさらに活性化することを願っている。

