巻頭言
生成AIについてどう教えるか?
日本社会福祉教育学会 副会長 阪口 春彦(龍谷大学)

近年、「生成AIについてどう教えるか?」という問いは、教育に携わる者にとって大きな関心事となっています。
本学会ではこれまで、2025年9月に開催された第21回大会において、川崎医療福祉大学医療データサイエンス学科講師の谷川智宏先生をお招きし、「指導する立場で知っておきたいイマドキ学生の生成AIの使い方」をテーマとした「開催校企画ランチョンセミナー」を実施しました。2026年3月には、谷川智宏先生を再びお招きし、「生成AIを“うのみにしない”ためのAIリテラシー~専門職教育に欠かせない仕組み理解とリスク認識~」というテーマで第16回春季研究集会を開催しました。これらの内容については、2026年中にJ-STAGEで公開予定の『日本社会福祉教育学会誌』第33号でご確認いただけるようになると思います。
私は、これらのセミナーや研究集会での学びを踏まえ、最近、生成AIをテーマとした授業を行いました。長くなりますが、その授業内容をご紹介します(実際に行った授業内容を一部修正しています)。
(1) 生成AIを使った完全パングラムの詩の作成
課題: 現代で使うひらがな46文字の完全パングラムの詩(いろは歌のようなもの)を作ろうとしています。次のとおり途中まで詩を作りました。
部屋の花散り 青く木と竹濡れて 沢照らす 城を背に本読み 眠るかも
(へやのはなちり あおくきとたけぬれて さわてらす しろをせにほんよみ ねむるかも)
まだ使っていない「い」「う」「え」「こ」「そ」「つ」「ひ」「ふ」「ま」「め」「ゆ」の11文字すべてを一度ずつ使ってこの後に続く意味の通る文章を生成AIに作らせて、詩を完成させてください。
濁音・半濁音・小書き文字の使用は不可、上記の文字以外を使うことも不可です。意味の通らない文章など、以上の条件を満たしていない文章を生成AIが提案してきたら、生成AIに作成し直させてください。制限時間10分。
(2) 生成AIとのやり取りの内容(生成AIからの回答など)の発表
(3) 生成AIを使わず自力での完全パングラムの詩の作成
課題: 生成AIを使わず、条件を満たした文章を自分で考え、作成した文章をメモしてください。制限時間10分。
(4) 自力で作成した完全パングラムの詩の発表
(5) 教員が作成した完全パングラムの詩の披露
教員が作成した完全パングラムの詩: 「~ 不意打つ声 眉ひそめ(ふいうつこえ まゆひそめ)」
(6) 感想(今回の生成AIとのやり取りをとおして生成AIに対してどのように感じ、生成AIに対する印象はどのように変わったか? 今後、生成AIをどのように利用すべきだと思ったか? など)の発表
(7) 生成AIの活用についての解説
解説の内容:
- 生成AIは万能ではなく、人間の方が優れていることもあること
- 生成AIは間違ったことを堂々と回答してくるし、指示したことを勝手に無視することもあるので、信用しすぎるのは危険であり生成AIの回答を検証することが重要であること
- 生成AIに頼ってばかりいると自身の考える力などが衰えていってしまうこと
- 生成AIの限界や得意なことを理解し、すべてを任せるのではなく、その力をうまく活用すべきこと
- 生成AIとのやり取りを繰り返して生成AIの回答をブラッシュアップしたり、プロンプトを工夫したりすることが重要であること
- 生成AIに頼ってばかりではなく自分で考えることも怠らないこと
- 大学が公表している生成AIを使う側の心構えを守って生成AIを活用するべきであること
なお、以上の授業を実施する前にいくつかの生成AIを使って完全パングラムの詩を完成させることができるか試してみたところ、同じ文字を複数回使っている、あるいは自然な日本語になっていないなど指定された条件が守られていない回答や、「条件を満たして完成させることはできません」との回答が生成AIから返ってきて、試行した範囲では、いずれの生成AIも条件を完全に満たす詩を完成させることはできませんでした。授業を実施したところ、受講生も10分間で詩を完成させることはできませんでした。しかし、時間をかければ私には詩を完成させることができましたし、おそらく根気よくやれば多くの人にもできると思います。

以上は今年度初めて行った授業実践であり、まだ改善の余地がありますが、上記のように実際に生成AIを受講生が使う機会を設けて生成AIの限界を実感させるとともに、人間ならではの強みを具体的に示すことで、生成AIに対する向き合い方を変容させやすくなると感じました。
上記のセミナーや研究集会に参加し、それを踏まえて授業を実践したことで、生成AIをはじめとする技術の進歩などに応じて授業を更新していくことの重要性を実感しました。その実現のためには、教員自身が継続的に情報をアップデートしていくことが欠かせません。
本学会が、そのような学びと情報共有の場として、会員の皆様の教育実践を支える存在であり続けられることを願っています。

